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イタリアオペラ翻訳家 とよしま 洋 のブログです。


by aula magna
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行け、思いよ、黄金の翼に乗って...

オペラ『ナブッコ』の第2改訂版の最終校正をしています。訳しながらヴェルディが
このオペラを作曲した当時の余りにも悲劇的な不幸を思うと胸が痛くなり、それゆえ
この作品は生まれるべくして生まれたのだという思いを強くしています。そして人と
の関わり合いが何よりも大切だということも....

ヴェルディは25~27歳(1838~40年)の間に2人の幼い子と妻を相次いで亡くすと
いう大きな不幸に見舞われます。こうした家庭的な不幸のどん底にあっても書かねば
ならなかったオペラ・ブッファも失敗に終わり、作曲家としての道を捨てようと決心し、
当時のスカラ座の支配人メレッリに契約の解除を申し出ていました。
そんなとき、ヴェルディはメレッリに無理やり渡された台本を手に家路につきます。

<歩きながらある種の耐え難い不安と深い悲しみが胸の中で膨れ上がるのを感じ... 
家に戻ると乱暴にその台本を机の上に放り出しました、ところがその前で立ち尽くし
てしまったのです。机の上で台本が開き、私の目はその頁に釘付けになったのです。
そこにはこんな詩句が書いてあったのです。
“Va, pensiero, sull’ali dorate:行け、思いよ、黄金の翼に乗って..”....... 
一文読み、次を読み... そしてもう書かないと決めたことを思い出し、読んではいけ
ないと自分に言い聞かせ、それを閉じベッドへ行ったのです。しかし「ナブッコ」が
脳裏を駆け巡り!... 眠ることができませんでした。起き上がって台本を一度、二度、
三度と読み返し、朝にはソレーラの台本を覚えてしまっていました。
                       ...... ジュセッペ・ヴェルデイ>

それでも決心を覆すことができなかったヴェルディは、この台本を返しに行くのですが、
メレッリに追い返され、ヴェルディは思案の挙句、この第3作目のオペラを書き始めた
のです。そして、この作品がヴェルディに決定的な成功をもたらし、オペラ作曲家と
しての将来が拓けたのです。
Commented by piccolo_fiore at 2012-09-17 17:18
ヴェルデイの生涯に魅かれ、彼のことをもっと知りたいと思っていたところ、先生の記事と出会いました♪ いつか、対訳書を読ませていただきたいです。^^
Commented by aula-magna at 2012-09-17 23:05
ありがとうございます。イタリアオペラの魅力を色々な形で伝え、「オペラ好き」を増やせたら.... と思っています。

by aula-magna | 2012-09-13 05:23 | ・イタリアオペラの話 | Trackback | Comments(2)